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ハイエンドスマートフォンの減速 ?iPhone、Xperia、Galaxy…… [Android]

スマートフォン市場は現在、大きな転換期に差しかかっている。通信キャリア大手3社は相次いで5月に夏モデルを発表したが、今、スマートフォンを買い換えるなら、我々はどういった点に気をつけるべきだろうか。


5月10日から、携帯電話事業主要3社が相次いて夏の新製品を発表した。KDDI(au)は10日に、ソフトバンクは11日にニュースリリースを出す形で発表を行い、発表会を行ったのはNTTドコモのみ(11日)、という形になった。

数年前まで、携帯電話事業者は季節ごとに大規模な発表会を開催するのが当たり前で、一挙に20機種以上の新製品が発表されることも珍しくなかった。しかし現在、発表そのものは規模を縮小しつつある。理由は、3社が扱うスマートフォンのバリエーション数が減ったためだ。

急激にラインナップが減る国内スマホ市場
今年のスマートフォン夏モデルは、NTTドコモが5機種・KDDIが2機種・ソフトバンクが3機種となった。


NTTドコモの2016年夏モデルは、スマートフォン5機種、タブレット1機種、Wi-Fiルーターが1機種

NTTドコモの2016年夏モデルは、スマートフォン5機種、タブレット1機種、Wi-Fiルーターが1機種.jpg



auの2016年夏モデルはスマートフォン2機種。


のスマートフォン夏モデルは、NTTドコモが5機種・KDDIが2機種・ソフトバンクが3機種.jpg




ソフトバンクの2016夏モデルはスマートフォン3機種。


ソニーモバイルの「Xperia X Performance」は3社すべて、サムスン電子の「Galaxy S7 edge」.jpg



しかも、ソニーモバイルの「Xperia X Performance」は3社すべて、サムスン電子の「Galaxy S7 edge」はNTTドコモとKDDIの2社が販売するため、実際にはもっと少ない。NTTドコモの発表会も、過去のようにハードウエアの特徴をじっくり説明するものではなく、NTTドコモ独自の工夫や展開するサービスをアピールすることが主軸。ハードウエアの説明に割かれた時間はきわめて少なかった。

そもそも、現在日本のスマートフォン市場でもっとも人気のあるiPhoneも、3社横並びの販売だ。過去にはドコモ向け・KDDI向けといったハードウエアもあったが、今は、アップルから3社に提供されるハードウエアはまったく同じものである。

スマートフォンは急速に均質化が進んでいる。簡単に言えば、技術の進歩により差別化が難しくなった、ということなのだが、ここには2つの側面がある。

「年間サイクル」導入の背景
第一は、「売れるハイエンドスマートフォン」を作れる企業のイス取りゲームが終了し、トップグループが決まってきたことだ。

「スマホはパーツさえ集めてくればどこにでも作れる」と言われることがある。しかしこれは真実ではない。最高性能の製品を作るには、それだけ良いパーツを優先的に、しかも大量に仕入れる必要がある。また、快適なスマートフォンを作るには、ソフト面での工夫も必要だ。販売数量が少なければそういう有利な立場に立つことも難しい。

しかも、アップルやサムスン電子などは世界を相手にビジネスをしており、パーツ調達点数や開発規模からいっても、日本国内だけでは不利になる。フィーチャーフォンの時のように、「機能的にハイエンドなスマートフォンが季節ごとに何十種類も出る」ようなことにはならない。きちんと差別化した上で開発するのも難しく、年に何機種も出せるものでもない。

NTTドコモは発表会で、今夏より、発売するスマートフォンのラインナップを減らし、各メーカー1ラインナップにつき年間1台とする「年間サイクル」を導入した、と発表した。この背景には、海外大手が1年かけてハイエンド製品を作っているのに対し、国内メーカーが年に複数機種を、少しずつ変えて市場投入することで競争力が失われていた、という事情がある。年間サイクルとは、そうした状況に対応するための策である。

ミドルクラスの需要拡大


3月に発売された「iPhone SE」は、これまでハイエンドモデルを売ってきたアップルのミドルクラス端末といえる。

もう一つの変化が、ミドルクラスのスマートフォンの価値向上だ。技術の進展はハイエンドスマートフォンの性能向上を促す一方で、その下の機種の底上げもする。最高の性能を目指さないのであれば、コスト的にもより安価で、調達が容易なパーツを使ったスマートフォン作りができる。過去、そうした製品は満足度が低かったものだが、現在は違う。最新のハイエンド機種の半額以下の製品でも、ほとんどの用途で問題は感じない。

とはいえ、契約に伴う各種割引の存在が常態化している現状では、購入時にハイエンドスマートフォンの価格の高さを意識することは少ないだろう。こうした事情もあって、特にトップ3社はミドルクラスのスマートフォン導入に慎重だった。現在日本では、多くのミドルクラスのスマートフォンは、MVNOが展開するいわゆる「格安スマホ」として扱われていることが多い。

しかし世界的に見れば、このクラスの需要拡大は明確だ。日本でも、ミドルクラスの機種が多い、いわゆる「SIMフリー」のスマートフォンは、2015年度、前年から倍増して170万5000台が出荷された(MM総研調べ)。日本全体(年間約3658万台、同じくMM総研調べ)から見れば少数派だが、唯一大幅な伸びが存在するジャンルでもある。

3月にアップルが発売した「iPhone SE」も、若干高いものの、このクラスに属する。「久々の4インチiPhone」ということで注目されたが、一方で「型落ちでなく最新のモデルでありながら、価格を抑えたiPhone」でもあった。アップルとしても、サイズ・性能に応じて価格差をつけた商品ラインナップを、最新の性能で実現しておく必要から用意された製品と考えられる。


ハイエンドスマートフォンの減速、サイクルの長期化
このように2015年は、世界的に「ハイエンドスマートフォンの減速」が見えてきた年だった。サムスン電子は2015年通期で、全世界でのモバイル分野の売り上げを前年比で6%落とし、2016年のモデル「Galaxy S7」での回復に注力している。アップルはiPhoneの全世界販売台数を、2015年中こそ過去最高を維持したものの、2016年1~3月期には、前年比18%マイナスの5119万台に落とした。

ハイエンドスマートフォンが売れなくなれば、こうした機種向けのパーツ事業も影響を受ける。ソニーはカメラモジュール事業について、2015年度に596億円の長期性資産の減損処理を行った。ソニーの吉田憲一郎CFOは「スマートフォン市場は低成長ステージに入った前提で事業を進める必要がある。15年度は拡大予測が強く、我々も読み違えた」とし、慎重な判断が必要、との姿勢を示す。

ハイエンドモデルの販売台数が落ちた理由としては、ミドルクラスのスマートフォンとの顧客の奪い合いのほか、すでに売れたハイエンドスマートフォン自身が長寿命化した、という事情もある。

「スマートフォンを落として壊してしまった」という人も少なくないだろう。以前はそうした時が買い替えのフックになっていたが、現在は修理して使う人が増えてきている。いや、修理コストが高い日本の場合、ガラス割れなら「修理せずに使う」人も少なくない。特に、まだ収入の少ない若年層で目立つ。

海外では、ショッピングモールの一角に修理業者がいるのが当たり前であり、その場でスマートフォンを分解して修理する光景がよく見られる。スマートフォンの生産拠点である中国・深センには、中古スマートフォンや工場から別ルートで出荷された部品から修理用部品を取り、不正規流通させる業者も多い。

日本の場合、携帯電話の修理は認定事業者のみが担当できる、という法規制があるために海外ほどの勢いはないものの、それでも、修理業者が増えていることに変わりはない。ソフトバンクは、5月9日より、ソフトバンク表参道とソフトバンクグランドフロント大阪にて、iPhoneの店頭引き取り修理を始めた。バッテリーの故障など、本体交換となる一部の修理については即日引き渡しとなる。これは、携帯電話事業者が修理対応を拡大することが顧客つなぎとめの効果を持つほどに“修理ビジネス”の価値が上がった、ということであり、この傾向は続くことだろう。

ハイエンドスマホに求められる「強い個性」
こうした事情を考えると、今後、スマートフォンのビジネスはどうなるだろうか? 日本でもミドルクラスの需要は増えていくだろうが、大手3社が大幅に料金体系を変えた上でミドルクラスの製品を大量に導入する、といった施策をとるとは考えづらく、MVNOを中心にじわりと広がっていく、と考えるのが自然だ。



スマホを耳に当てるだけで電話を受ける、スマホを振って耳に当てれば電話をかけられるなど、画面にタップせずに通話関連機能を利用できる「スグ電」機能。Xperia X PerformanceなどNTTドコモの4機種で利用できる。

同じ機種が色々なところから販売されるようになったため、携帯電話事業者としても差別化が難しくなっている。発表会を開いたNTTドコモは、自社が取り扱うスマートフォンに「スグ電」という機能を搭載した。電話の着信時、通常は画面を触って操作しなければならないが、スグ電対応機では、本体を振るだけで着信できる。また、自社が展開する「dショッピング」など、ポイント施策を中心とした旨味のあるサービスも用意し、多角的に「ドコモを使い続けてもらう」ことを考えている。2015年以降、各社がポイントサービス連携を強化しているのは、端末が減って差別化が難しくなり、さらにハイエンドスマートフォンの求心力が落ちているがゆえでもある。

トップメーカーの稼ぎ頭であるハイエンドスマートフォンは、短期的に数を大きく減少させることこそないだろうが、少なくとも右肩上がりの状況にはない。そこで勝ち抜いていくには、「ハイエンドであることの価値」を明確にする要素が必要になってくる。

サムスン電子やLG電子は「VR」に注力する。スマートフォンと組み合わせて使うヘッドセットを用意し、それを経由して映像を見ることで、自分の視界を映像で置き換え、そこにいるかのような体験ができる。VRには高い性能が必要であり、現在のスマートフォンでもまだ不足している。だがそれでも、Galaxy S7 Edgeなどの最新スマートフォンであれば、昨年モデルよりも能力が向上している。サムスン電子は、Galaxy S7シリーズの予約者全員に、同社のVR用ヘッドセット「Gear VR」をプレゼントする。VRがどこまで市場を広げるかは議論が分かれるところだが、それでも、「マシンパワーを新しい体験に変換する存在」であることに変わりはない。

アップルが何を軸にするつもりかはまだ見えないが、アップルのティム・クックCEOは、アメリカのニュース専門放送局CNBCとのインタビューの中で、次のiPhoneに「それなしには生きていけなくなるような想像もつかない新機能」を搭載する、とコメントしている。蓋をあけるまでなんとも状況が見えないが、アップルも「強い差別化」の必要性を感じているのは間違いない。

それに比べると、日本勢はどこか弱々しい。ソニーモバイルは音声認識を含め、Xperiaと連動する周辺機器の投入を検討しているものの、製品化の予定など、詳細はまだ見えない。シャープや富士通は、今季のドコモ向けモデルでデザインを一新したものの、独自性は薄れてしまった。

ハイエンド減速傾向の今、「このデザイン、この機能があるからこのスマホを選ぶ」という強いアイデンディティを打ち出せなければ、この先選んでもらうのは難しい。日本市場が日本メーカーに有利であるのは事実だが、それはいつまで続くだろうか。

スマホの購入サイクルを再検討する、良いタイミング

大手通信3キャリア以外で、SIMフリーのスマートフォンを買う人も今後は増えるだろう。右はミドルクラスで人気のASUS「ZenFone Go」。また防水×おサイフケータイ機能を持つ端末なども登場している(左)。

ハードウエア性能が踊り場に近づいた今は、購入する我々の側にとっても、スマートフォンの購入サイクルを再検討するいい時期である。

ハイエンドスマートフォンは性能の陳腐化が遅く、長く使えることは事実だ。NTTドコモはハイエンドスマートフォン新製品の特徴として「安心して長く使える」ことを挙げている。2年間の割賦とそれに伴う割引期間で買い替え、と決めてしまうのではなく、さらに長く使うことも考えていいだろう。

NTTドコモの「機種変更応援プログラム」やKDDIの「アップグレードプログラム」、ソフトバンクの「機種変更先取りプログラム」に加入しておくと、「2年」を待たずに機種交換する際、キャッシュバックやポイント還元などの手段で利用者に還元が行われるので、トータルでは安くなる。劇的に安くなるというより、「割賦残金など、スマートフォンを買い換えるハードルとなる部分の負担を減らす」ことが目的だ。

一方、新規契約やMNPでの乗り換えに伴う販売奨励金やキャッシュバックは減額されていく傾向だ。従来は、MNPしながらどんどん新機種を乗り換えていくようなやり方をすれば、スマートフォンをゼロ円に近づけることも難しくなかったが、今後は短期で切り替えるのが損になる可能性もある。そもそも割賦でハイエンドスマートフォンを買うことを止め、ミドルクラスのSIMフリー機を現金一括で購入して使う選択肢もある、性能の陳腐化はハイエンドより早いが、そもそも価格が半分なのだから、数年間の利用コスト全体で見ると、出費が小さくなる可能性も高い。

「事業者を変更するのか」「事業者そのものを変えるのか」、それから「どんな使い方をしているのか」。そろそろ、そうしたことを見直していい時期だ。

文=西田宗千佳


PRESIDENT Online引用

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